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2008/08/28 (Thu) 潮時

●『潮時』

毎月の読書会で、長年にわたってお世話になっている尊敬する紳士・Jさん。
誰でも知っている大きな会社を定年退職されてもう十数年・・・。
奥様とお二人で旅行をしたり、文学を研究したり、生活を楽しんでいらっしゃる。
Jさんの南の太陽の下で生まれ育った明るく気さくなお人柄が大好きだ。
心の若々しさ、研究熱心さは、私たちに欠かせない刺激と元気の源。
いつも冗談ばかりおっしゃりながらも、軸がぶれないのは、50年以上にわたるキリスト教への信仰を大事になさっているからだろうか。
Jさんの波乱に富んだライフストーリーだけでも、何冊もの本になるような面白さだ。
私たちはよく、読書会終了後に食事をしながらJさんの話を聞くのだけれど、聞けば聞くほどに引き込まれる。
私は、困ったことがあると、ときどき、Jさんに相談する。
すると、不思議と笑顔で前に進むことができるようなエネルギーを下さる。


そのJさんが、ある時なにげなくお話しして下さったことが心に残ったので、書きとめておきたい。
それは、Jさんの娘さんの話だ。
彼には、私よりずっと年上のお嬢さんがいらっしゃる。

「私の娘はね、学生時代から熱心に演劇をやっておったんですよ。
もう、寝ても覚めても、演劇、演劇で、芝居のことで頭がいっぱい。
そのうち有名な○川○夫とかいう演出家の舞台に出たり、はてには自分で、自分の劇団まで立ち上げてね。
本当に一生懸命やっておりましたよ。
この子は一生芝居の道で生きていくつもりなんじゃないか・・・と、思いながら見ていましたよ。

ところがね、命がけでやってきた芝居を、三十歳になったときに、突然パタッと、やめてしまったんです。
それはもう鮮やかに、見事なまでにスッパリとやめましたよ。
惜しげもなく・・・。
その後すぐに結婚して、それ以来今まで十年以上、いっさい芝居とはかかわりのない生活です。
今は、夫と一緒に、それまでとはまったく畑違いの『医療ジャーナリスト』として、世界を飛び回って活躍していますよ。

芝居をやめたその頃は、
『どうしてやめたんだ?』
とは聞きませんでしたがね・・・・。
先日、娘と久しぶりに会ったときに、二人で食事しながらね、娘が言ったんです。
『お父さん、あの時が、ちょうど”潮時”だったのよ。』
ってね・・・。
やめて十年経つ今だからこそ、出てきた言葉かもしれないですね。

『”潮時”か・・・。なるほどなぁ・・・。』、と思いましたよ。
それはもう、まさに、
『潮時』
としか言いようのない瞬間が、娘に訪れたのだ、ということなんでしょうね・・・。
その一言で、深く納得しましたよ。
人生には、
『潮時』
っちゅうもんが、たしかにあるってことですよ。
私自身の人生を振り返っても、『潮時』という言葉でしか説明できなような瞬間がいくつもありましたよ。
それは、逃しちゃいけない・・・逃れることのできない運命の決めた時期というものなんでしょう。

『見るべきほどのものは見つ・・・』
その芝居という世界で、”彼女が”見るべきものは、見尽くした、という瞬間。
”彼女が”やるべきことは、すでにやり終えた、という瞬間。
その瞬間の訪れは、人それぞれに違う時期なんだと思いますが、うちの娘の場合は、芝居をやめて結婚したその時が、ちょうど『潮時』だったんですね・・・。

そして、ちゃんと『潮時』をとらえることができたなら、神さまは、ちゃんと次のすばらしい道を備えておいてくれるもんですよ。
『医療ジャーナリスト』という、それまでとはまったく違う分野を、娘はかつては想像していなかったと思いますが。
でも、一から勉強を始め、パソコンをマスターすることからスタートして、今こうして、新たな道で必要とされて、夫と二人三脚で毎日充実して忙しく活躍している。
本当に、不思議と上手くできているものだと思いますよ・・・。」

今、踊りを離れ、結婚し、母になろうとする私を見て、自分の娘さんと重なるところを感じて話してくださったのだろう。
Jさんは、クリスチャンだからだろうか。
自分の存在をはるかに超えた大いなるものの「意思」を信頼する心を感じる。
「神さまのなさることには、はっきりとした意図があるのだ。」
という意識。
「私の人生の道も、神さまの手の内にあるのだ。」
という信頼感。
その信頼感があれば、人生は恐くない。
聖書の言葉で言うなら、
『すべてに時あり』
『主の山に備えあり』
だ。

そしてまた・・・。
私にJさんという存在がいて、こういう話を聞かせて下さることも。
それもまた、備えられ、与えられたことなのだろう。

訪れるべくして訪れる「潮時」・・・。
そして、すでに備えられ、準備されている「新たな道」・・・。
しがみついて来た手を離し、いったん自由になる。
その時が『潮時』。

『潮時』を受け入れることができれば、ちゃんと次の道が待っている。
バカボンのパパのように、
「これでいいのだ!」
と、大きくうなずいて、自分や人生をそのまま受け入れて、笑顔で力強く前へ前へと歩いていくことができる。

しがみつき続けていたら、見えなかったもの。
しがみつき続けていたら、得られなかったもの。
そういうものが確かにあることを感じる。

みんな、日々何かを手放し、何かを手に入れながら生きている。
実は、大きなものを手放せば手放すほど、代償として手に入るものも大きい。
大きなものを得ようと思ったら、代わりに何かを手放さなければならない。
でも、いくら何を手放そうとも、それまで過ごしてきた時間の中から得たもの、学んだこと、積み重ねてきた「経験」は、永遠に失われることなく、血となり、肉となって、存在し続ける。
Jさんは、
「それだから『潮時』が訪れたら、手放すべきなんだ、手放すことを怖れる必要はまったくないのだ」
と、教えてくれた。

「結婚する」ということは、「独身」である自分との決別。
「お母さんになる」、ということは、「お母さんではない」自分を、永遠に手放すこと。
でも、どちらの方が価値が高いとは言えない。
きっと重さは同じ。
ただ、内容が違う、ということ。
「黄金1kg」と、「鉄くず1kg」を交換してしまうのか・・・。
はたまた、「土1kg」と、「ダイヤモンド1kg」を交換するのか・・・。
それは、それぞれの価値観で、もしかすると黄金よりも鉄くずの方が利用価値が高いかもしれない。
ダイヤモンドは美しい。けれど、土からは植物や生物、新たな命を生み出すことができるかもしれない。
「幸福」には、見た目の華やかさや、一般的な市場価値だけでは、はかりきれないものがある。
自分にとっての「幸福」とは何なのか。
「自分」は何を手放し、何を手に入れるのか・・・。
それを、よく見つめ考えることが大事なのだろう。

『潮時』
という言葉、深く心に残った。

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comment

すごく感慨深いお話ですね・・。
marさんがJさんと出会い、このタイミングでこの話を聞けたのも必然。
そして、このブログでこのお話を聞けたのも、私にとっては必然なのかもしれません。

人生の色んな節目に思い出すお話ですね。
次の人生があるのも今の人生を大事に生きてこそ。
一日を大切にしたいと改めて思いました。
ありがとうございます。
2008/08/28 16:55 | ♪ [ 編集 ]

潮時・・・かぁ・・・

自分の人生で何時が潮時だったのか解らず、だらだら生きてきました。
なかなか気づかず過ごしてしまいますね・・・とほほほ

欲の固まりなあたしは・・・潮時を見過ごし
もう少しやればなんとかなるかなぁ・・・・
って・・・

きちんと目標を持てると違うんでしょうね~~~はぁ~~


信仰心の無いクリスチャンである事も・・・あかんなぁ・・
反省の日々です・・・

素敵なお話有り難うございます!!


2008/08/29 09:53 | さるしおん [ 編集 ]

☆♪ちゃんへ

コメントありがとう!!
ここのところ天候が不安定だけれど、元気ですか?

Jさんにはね、もうこの10年ぐらいお世話になっているのですが。
普段は冗談ばかりおっしゃっているのに、いざというときにハッとするような大切なことを教えてくれるのです。
そういう人が、身近にいて下さるのはあり難いことです。

♪ちゃんの言う「人生の節目」という言葉も、「潮時」にニュアンスとしては近い言葉ですね。
竹も、節を作りながら上へと伸びる。
節のないツルツル人生より、味わいが深いと思えます。
こちらこそ、ありがとうございます!
2008/08/30 09:00 | mar [ 編集 ]

☆さるしおんさんへ

ふふふ・・・。
私も、今年の春という転換期を経験しなければ、「潮時」という言葉にピンと来なかったかも。
この10年ぐらい、「踊りと仕事の二足のわらじ生活」が続いていましたから・・・。
もちろんその中でも、何かを得て、何かを手放しながら日々を生きてはいたのでしょうが、外的な大きな変化にさらされなかったので、そう実感しなかったのだと思います。
日々の小さな積み重ね・・・。
日々の小さな変化。
その中にも、喜びや悲しみや、感動や、色んなことがあって・・・。

こうして大きな環境や身体の変化の中にいると、その意味を考えずにはいられないのかもしれません。

でも、今は、「おなかにいる赤ちゃん」が、すべての答え・・・というか、絶対的なものであるように感じます。
この子に会えるのが、そして一緒に生きていく人生が、とっても楽しみなんですよ♪
2008/08/30 09:05 | mar [ 編集 ]









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Author:mar(マル)
☆大切なこと
「真・善・美」な道を求めて日々成長すること。

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(ヘルマン・ヘッセの言葉) 

☆好きなこと
・空が好き。
・本(古典・純文学系)が好き。
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・いい映画や、美術、旅行も好き。
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・色々考えることが好き。
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☆好きな本
・ヘッセ『デミアン』『春の嵐』
・リルケ『若き詩人への手紙』
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・三浦綾子『道ありき』『氷点』『泥流地帯』『塩狩峠』
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・ドストエフスキー『白痴』『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』
・ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』
・トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』
・ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
・宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
・ゲーテ『若きウェルテルの悩み』
・サンテグジュペリ『星の王子さま』
などなど。

☆好きな映画

『初恋の来た道』『ポンヌフの恋人』『ローマの休日』『アメリ』『父と暮らせば』『ノッティングヒルの恋人』『ライフイズビューティフル』『ベティーブルー』『存在の耐えられない軽さ』『嵐が丘』『LOVERS』『汚れた血』『イングリッシュペイシェント』『エトワール』『風と共に去りぬ』など

☆好きな音楽

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